生ける屍の死 ― 2016年01月28日 00時37分27秒
生ける屍の死(山口雅也 著)創元推理文庫
この小説の初出は、1989年ということで、「このミステリーがすごい!’89」の第8位にランクインしている。
その年は、「私が殺した少女」、「奇想、天を動かす」、「エトロフ発緊急電」、「クラインの壺」、「羊たちの沈黙」、「古い骨」等の傑作がたくさんあったので、僕はこの小説には触手を伸ばさなかったようだ。そして、文庫化されたのが、もう20年前、1996年のことです。
僕が、この小説を買ったのは、東京創元社が1997年9月に出した「本格ミステリ・ベスト100 1975-1994」という本で、これが第1位にあげられていたからだ。
20年間での第1位のミステリーとあっては、これは読まなければいけない。ということで買ったのだけど、何故かその後20年間ずーっと気にはなっていたのだけど、未読の本棚に入れられたままでした。何故か? 理由は自分でもわかりません。で、やっと今、読み終えました。
で、読後感を正直に言うと、僕はあまり面白くなかった。
舞台はアメリカで、登場人物もほとんどがアメリカ人。そのせいか、はじめは登場人物の名前を識別するのが一苦労。
でも舞台をアメリカにするのは必然性がある。死者を復活させなければいけないけど、それには死体が必要。日本では死ねば火葬だけど、アメリカはまだ土葬が多いから。それに、最後の審判ですかね。
探偵役はよみがえった死者なのです。というとオカルトものかと思われるけど、これはれっきとした本格ミステリーだと認めます。ドタバタで始まりドタバタで終わるけど、ミステリーとしての伏線はきちんとはってある。本格ミステリーのルールにのっとったもので、謎解きもきちんとしていて、オカルトではないですよ。だけど、死者が甦るといういうとんでもない設定をどう評価するのか。
僕は、娯楽としての本格ミステリーとしては、この小説は嫌いですね。「折れた竜骨」みたいな初めからおとぎ話の中での本格ミステリーならわかるのだけど、これはちょっと違う。
ここらへんの評価については、この文庫本の最後の解説で、法月倫太郎さんが詳しく書いてあるのだけど、とても難解で僕にはよく理解できない。なんとなくわかる程度です。
ということで、伏線のはりかた、論理的解決の仕方など、とてもよく工夫されていて感心するのだけど、どうも好きになれない作品です。
この小説は、週刊文春の「東西ミステリーベスト100」(2013年1月)では、国内編で15位にランクされている。
僕の本棚には、読まれるのを待っているこんな本がたくさんある。死ぬまでに、きっと全部は読めないなあ。
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