どこかでベートーヴェン2017年08月12日 22時35分15秒

どこかでベートーヴェン
どこかでベートーヴェン(中山七里 著)宝島社文庫

 先の「蜜蜂と遠雷」を買ったときに近くにあった文庫本です。「このミス大賞シリーズ」とあるからミステリーだろうし、ベートーヴェンを表題にしているからクラシック音楽とも無縁ではないだろうということで、その時一緒に購入していたもの。

 なかなか面白かったですね。ミステリーとしての謎解きは、ちょっと雑な感じがしないではないが、登場人物のキャラがいい。主人公の岬洋介は、イケメンの天才ピアニストだ。ワトソン役は、同じ音楽高校の同級生鷹村亮。彼もなかなか好人物だ。

 音楽描写もとてもいいと思う。岬洋介の弾くベートーヴェンの「悲愴」の描写を読んでいると実際にピアノの音が聞こえてくるかのように感じる。なんだか先の「蜜蜂と遠雷」の音楽描写よりリアリティがあるようだ。
 文章も読みやすいし、ミステリーとしての出来がもっと良かったら、ベストミステリーに挙がっていたかもしれない。

 この作品は、岬洋介を主人公としてシリーズ化されていて、他に三冊あるようだ。どれも文庫化されているようなので読んでみたい。
 ところでこの「どこかでベートーヴェン」は、シリーズ最新作なのだが、主人公岬洋介の最初の事件となっていて、時制的にはシリーズで一番古い時期ということになるようだ。この作品で、もう二度と弾かないとピアノに別れを告げた主人公が、その後、各地のコンクールで活躍しているのが後のシリーズに描かれているようでもある。

 また、文庫の巻末の部分に「次回『もう一度ベートーヴェン』(仮題)をお楽しみに」とあるので、もしかしたら続編が書かれているのかもしれない。鷹村亮の再登場も含めて楽しみにしています。