真夏の方程式2011年08月03日 00時19分28秒

真夏の方程式
真夏の方程式(東野圭吾著)文芸春秋
 東野さんの刑事加賀恭一郎シリーズの最新作は、先の「麒麟の翼」だったけど、こちらは、彼のもう一つの人気シリーズ探偵ガリレオの最新作だ。
 「麒麟の翼」もそうだったけど、こちらの「真夏の方程式」も残念ながらシリーズ最高作にはならないだろう。
 ガリレオは、天才物理学者湯川学のこと。不可解な犯罪を、彼の天才が見事解き明かしていくという科学ミステリーで、その謎解きとガリレオのかなり特異なキャラクターが魅力的なミステリーだ。
 「真夏の方程式」も、そのスタイルはなんとか維持している。海洋開発のアドヴァイザーとして美しい海の町を訪れたガリレオが、殺人事件に遭遇する。それに、今回は可愛い少年も登場する。いろいろと工夫された物語の展開はあるが、なんだか長編にするために無理をして展開しているような気がする。しかも、シリーズの売り物の、謎の物理的な解明も今一つのようだ。
 無理をして長編にしたために、あのガリレオの特異なキャラクターさえも、加賀恭一郎に似てきたりして、おや?なんかしっくりこないなあとか思う。
 ガリレオシリーズは、最高の長編「容疑者Xの献身」を頂点として、あとは短編にして最高に魅力を発揮できるシリーズではなかろうか。
 この最新作も、決して面白くないわけではないのだが、敢えて不満を述べておく。

絆回廊2011年08月07日 00時34分08秒

絆回廊
絆回廊 新宿鮫Ⅹ(大沢在昌著)光文社
 新宿鮫シリーズは、僕の大好きな警察物シリーズの一つだ。その最新作が5年ぶりに出た。
 シリーズ9作目「狼花」で、いろんなことに大きな区切りが付けられたのだが、このシリーズ10作目では、新たな展開を見せる。「ある主要な登場人物が、舞台から去る。」(高津祐典氏による作者の話)というものだ。
 長期の刑期を終えたヤクザが、復讐をしようとしている。それを阻もうというのが、新宿鮫こと鮫島警部なのだが、周囲の人間関係にも異変が起こる。どう鮫島は乗り切っていくか。
 きびきびしたストーリー展開は、飽きることなく一気に読んでしまう面白さだ。失いたくない人を失わなければならないとき人はどう考え、どう行動するのか。なんて場面もあり、涙もろい僕なんぞはつい落涙してしまう。
 なかなかよくできた本編だったが、さて、「舞台を去る主要な登場人物」が、単数なのか複数なのか。次作でどのようになっているのか、とても次が待たれる。
 また5年後なんてことはなしに、できるだけ早く最終作まで持って行ってほしい。僕もいつまで舞台に上がっていられるかわからないし、失礼だが、作者だっていつまでも舞台にいられるか解らないのだから。
 できれば、鮫島には、最後はどこかに安らぎのあるところを与えてやって欲しいなあ。

合頭山、猟師山2011年08月07日 19時46分48秒

合頭山(ごう(がっ?)とうさん 1390m)、猟師山(りょうしやま 1423m)
 先週水曜から体調を崩し、木曜日はとうとう仕事を休んでしまった。金曜日までは食欲もないくらいだったが、土曜日にゆっくり寝ていたら、どうやら快復したようだったので、九重に別の用事もあるし、いつも気になっていたがわざわざ登るほどもないかなと思うような山に、この機会だから登ってみようと思い立った。まあ、リハビリですね。
 それが、この二つの山、合頭山と猟師山だ。九重の牧の戸峠からやまなみハイウェーを阿蘇のほうへ700mほど下ったところに左に広い駐車スペースがあり、道を挟んでその反対側が登山口だ。
牧の戸の登山口

 登山口の表示板があることはあるが、古くなってもう字が見えないし、表示板そのものがブッシュの中で解りにくくなっている。
 が、登山口は、明瞭だ。ブッシュの中をしばらく緩やかに登ると、すぐに合頭山の第1のピーク目指して一直線に登るカヤの道となる。
第1頭への急登
 
 合頭山は、たぶん「ごうとうさん」と読むのだろうが、その名のとおり、三つの頭を合わせた横長の山らしい。
 登りついたところが第一の頭で、直進すれば猟師山へ、右には合頭山の第2、第3の頭に行く。
合頭山へ

 三つの頭といってもそれほどのアップダウンがあるわけでなく、第3の頭までなだらかな縦走路となっている。
花の名前忘れた

 分岐から10分ほどで登りつく。
 
合頭山山頂

 山頂には合頭山の表示があるが、標高は1390mと書いた新しい標識と1343mと書いた古い標識があるが、僕の持っている地図には表示がない。

合頭山山頂から見涌蓋山

合頭山から見た猟師山

 山頂を踏んで引き返す。分岐に戻り、猟師山を目指す。
分岐から猟師山へ
 
 いったん緩やかに下り、緩やかに登り返す。
猟師山への気持ちのいい道

 下り始めたところからみた感じはとてもいい。
 通り過ぎている台風の影響か、ものすごい強風で、吹き飛ばされそうになりながら、それでもとても気持ちよく歩ける。あっというまに山頂に着く。
猟師山山頂

 山頂は狭く、展望もそれほどのものでもない。水を飲んで、一息ついたら下山。往路を下る。
 
九重スキー場と涌蓋山

 往復1時間半足らずの簡単な山歩きだったけど、とても気持ちのいいコースで、ハイキングには素晴らしいコースではないだろうか。もう一つ、スキー場からのコースには、山の貴婦人オオヤマレンゲが咲くところがあるとのことだから来年はそこから登ってみよう。
3つのピークの合頭山

(11:10)牧の戸登山口発、 (11:21)合頭山分岐、 
(11:30)合頭山山頂、 (11:40)分岐、 (12:00-5)猟師山山頂、
(12:30)登山口に戻る。
 


黒猫のタンゴ2011年08月08日 21時04分34秒

ブォノ!イタリアン
 6日土曜日の朝日新聞beに「黒猫のタンゴ」を歌った少女のことが載っていた。「黒猫のタンゴ」は、日本では、1969年に皆川おさむさんが歌って大ヒットしたので、たいていの大人は知っていると思います。可愛くて楽しい曲ですね。
 新聞にあるように、原曲はイタリア語で、4歳くらいの少女が歌っている。レコードは、なんと900万枚も売れたとのことです。その少女が、やがて売春宿のオーナーとして逮捕されるというから、人生はわからないものだ。
 実は、記事が新聞に載る数日前に、僕は、彼女ビンチェンツァ・パストレッリの歌う、この曲の原曲を聴いていたのだ。僕のipodに収まっていて電車の中などで時々聴いているのだ。皆川さんのもとても可愛らしいけど、この原曲を聴いたときには参ったね。可愛くて可愛くてとても素晴らしいですよ。曲を知っていて、まだ原曲を聴いたことのない人は、ぜひ一度聴いてみてください。
 新聞では、原曲は入手困難と書いてありますが、「ブォノ!イタリアン」というオムニバスCDに入っています。新品の購入は難しいようですが、アマゾンで中古なら販売しているようです。そのページから試聴もできますよ。

テンペスト2011年08月12日 00時44分16秒

テンペスト
ベートーヴェン ピアノ・ソナタ第17番二短調「テンペスト」
 ウィルヘルム・ケンプ(ピアノ)
 くそ暑い日が続いている。こんな時には、ピリッと締まってスカッとする短いピアノ曲でも聴きたくなる。そこで、思い出したのが、このベートーヴェンの「テンペスト」だ。
 僕が、まだ学生の頃、クラシック音楽などほとんど聴いていなかった頃、友人のアパートを訪ねた時、部屋から流れ出していた曲がこの曲だった。この曲を練習中の友人を訪ねたわけだが、印象深かったので、初めから弾いてくれと所望した。
 出だしからのなんというかっこの良さ!右手の伴奏に交差する左手の「ダッ・ダ・ダ・ダーン」という強いメロディの打弦。視覚的にもとてもかっこいい。
 今だに、僕のこの曲に持つイメージは「かっこいい!」だ。
 この曲を契機に、ベートーヴェンのピアノソナタをだんだん聴くようになった。「ワルトシュタイン」、「告別」、「悲愴」、「熱情」そして「月光」は、僕の大好きなピアノ曲となっている。
 ところで、この「テンペスト」という愛称だが、なんでもベートーヴェンが、曲の由来については「シェークスピアのテンペストを読め」と言ったとか言わなかったとか。というところまでは、案内書に書いてあるのだが、はたして「シェークスピアのテンペスト(大嵐?)」が、どのようなものなのか、はたしてその意味は? 誰も何も書いていないようですが。
 今夜は、ケンプのレコードで聴いたのだが、なんだか少し堅くて大人しい感じを受けた。帰宅する前に、行きつけの天神のタワーレコードに寄ったのだが、お目当てのポリーニのが置いてなかった。ガイド本によると一番人気のレコードみたいだが、人気のものが何故置いてないのか。帰宅してアマゾンでも調べたがここも在庫切れになっていた。
 別途、出品者の分があったので注文したが、着くのが楽しみである。

隻眼の少女2011年08月17日 22時17分31秒

隻眼の少女
隻眼の少女(麻耶雄嵩著)文芸春秋
 昨年のベストミステリーで僕が読んだ最後のものは、この「隻眼の少女」だ。「週刊文春ミステリーベスト10」の4位、「このミステリーがすごい!」も4位、「ミステリが読みたい」では7位にランクされていて、しかも「本格ミステリベスト10」では、堂々第1位にランクされているので、相当期待して読んだ。近頃本格物と言われるもので、いいものが読めていなかったから。
 で、結論から言えば、「なんだこりゃ」です。こんなものが、本格物の第1位にあがるなんて、評論家はどうかしていると思いますね。
 ネタばれになるけども、敢えて言えば、一番ひどいところは、「本格ミステリーのルール違反」だということ。「本格ミステリーのルール」というものが、きちんとあるのではありませんが、昔からいろんな人がいろんなことを言っている。「ノックスの十戒」というのが一番有名でしょう。現代において、勿論そのすべてが正しいとは言えませんが、まあだいたいその通りだと肯けるものが多い。
 この「隻眼の少女」は、その中でも僕が重要だと思っている事項に違反しているのです。その点で、読後感がすごく悪いものとなっている。
 それにこまごまとした推理が、たいていが都合のいいこじつけや、他になんとでも解釈できそうだったり、一方的だったりする。あの世界的名探偵ホームズの推理も同じようなものだといえば、そうなんだけど、まあこの小説はひどすぎるような感じを受ける。
 さらに、重大なものである犯人の動機と、現実に起こした犯罪とのバランスがとても考えられないくらいかい離があってひどいことも、「そんな馬鹿な!」という気になる。
 最後にこれも最重要と言ってもいいかもしれないが、名探偵のキャラクターや服装が全くおかしい。いくら名探偵でも、たかだか25年前ですよ。水干をユニフォームにしているような変な少女を探偵として受け入れるような警察なんてありえませんよ(まあ、水干にはそれなりの役割は用意されていますがね)。おかしい変人として排除されるに決まっています。
 明治の初期ならまだしも、社会的にもありそうもないことばかりだし、いくら作り話といってももう少しリアリティが欲しいですよ。
 多少おかしくても、最後は大どんでん返しの綺麗な解決があるのかなと期待して読み進めたのに、とんでもないおかしな結末でがっかり。そんなのありか、おかしいよ!!!
 と、何やかやで、この小説には全く失望しました。
 古典に「隅の老人」という本格物があり、それをちょっと思い出したりもしたが、全く意味合いが違う。これは蛇足。

指山2011年08月21日 23時11分57秒

指山(ゆびやま 1449m)
 指山は、「ゆびやま」と読むのか「さしやま」と読むのか解らないが、九重の三俣山と長者原との間にある静かな山で、自然がいっぱいだが、それほど人気のない地味な山である。わざわざそこだけを登る人はあまりいないようだが、ハイキングには手頃な登りの山である。
 9月の朝日会は、天候に不安があったので、指山を散策した。
長者原登山口

 長者原の登山口の右手のほう、硫黄高山への舗装された鉱山道路を一直線に奥へ行くと、やがて左手に指山自然観察路の案内標識があるので、そこへ入る。
指山自然観察路入口

 涸れ沢を下って渡れば、自然林の感じのいい緩やかな登りとなる。
指山への登り

 やがて雨ヶ池方面からの道と合流すれば、そこからはやや急な登りとなる。黒い粘土質の火山灰の道が、滑りやすいのでゆっくりと登るが、これが意外と疲れる。
 ひと汗かいたころに緩やかな灌木帯(ミヤマキリシマかな)にでれば、山頂はすぐである。晴れていれば目の前に三俣山が聳えているのだが、あいにくの曇天で何も見えない。
指山山頂

 昼食後は、往路を戻る。急に雨が降ってきたりで変わりやすい天気だった。

 下山後は、改装なったコスモス荘の温泉で汗を流し、近くの「エイドステーション」に宿泊。バーベキューを楽しんで、後は例のごとく麻雀に興じる。どうも今年度は不調が続いている。完敗。
エイドステーションでバーベキュー

 夜半から大雨となり、翌日まで降り続く。



異端の大義2011年08月29日 00時32分19秒

異端の大義
異端の大義(上)、(下)(楡周平著)新潮文庫
 せっかくの好天が土日と続いたのだが、ポイントの時間が所用で山はお預け。
 そこで友人が貸してくれた小説を読んだ。ミステリーではなく、経済小説ということになるのだろうか。作者の楡周平さんの小説は、「Cの福音」に始まる「朝倉恭介シリーズ」6部作しかしらない。「朝倉恭介シリーズ」は、クライムノヴェルとでもいうのかダーティヒーローが大活躍する、スリルとサスペンスに富んだスピーディーな展開で、大変面白かった。
 この小説もそのつもりで読み始めたのだが、ところが、こちらのほうは全くの経済小説で、ちょっと勝手が違った。まあ、面白くないことはないというか、面白いのだが、「朝倉恭介シリーズ」に比べると、やや冗長かなとも感じられる。
 白物家電のメーカーに勤務していた優秀な男が、内部の人間関係から追い出され、いろいろあって、最後は溜飲を下げるのだが、まあ、簡単に言うとそういうことになる。
 経済小説を読む楽しみは、モデルとなっていそうな現実の企業を想像したり、我が国の置かれている経済社会状況の分析の妥当性などを考えたり、その中でいかに大義というか、己を貫くのかというのが中心なのだろうが、この小説は、そこらへんをきちんと網羅しており、飽きずに読める面白いものとなっている。
 「朝倉恭介シリーズ」なみの面白さを期待して読むとがっかりするが、たまにはこんな小説もいいのかなと、短時間で一気に読んでしまいました。