二流小説家2012年01月15日 16時56分57秒

二流小説家
二流小説家(デイヴィッド・ゴードン著 青木千鶴訳)ハヤカワポケットミステリー

 昨年のベストミステリーで、「このミステリーがすごい!」、「週刊文春ミステリーベスト10」、「ミステリが読みたい!」の三誌すべてでベスト1となった史上初のミステリーということです。
 このところ、感心するミステリーが少ないから、期待して読みました。

 いくつものペンネームを使いながら、ポルノ小説やSF小説などを書いている二流小説家(三流ではないですよ)に、猟奇的な殺人犯から自伝の執筆依頼が舞い込んだ。さてどんな展開をするのか。

 不思議な小説です。
 西洋風のちょっとなじめない冗談から、しんみりとほろっとするところ、どちらが本当かなと思えるような書き出しにとまどう。でも訳者青木千鶴さんの翻訳がいいのか、とても読みやすくわかりやすい。上下二段の450ページがすんなりと読めてしまう。

 一気に読める内容だが、ゆっくり味わって読みたくなるような文章だ。

 もちろんミステリーとしてのしかけも十分だし、ハラハラドキドキの活劇も準備してある。
 登場人物のキャラクターも魅力的だ。特に、高校生ビジネスパートナーのクレアがいい。ロクティの「眠れる犬」に登場する少女セレンディピティを思い出した。

 終盤には、なんだかドストエフスキーの「罪と罰」を思い起こすような箇所もあり、ミステリーの形を借りた文学作品だと言うのは、言いすぎだろうか。

 そのほか、作家や創作活動の裏側事情みたいなこともたくさん書いてあり、その筋の人たちには別の面白さもあるに違いない。評判通りの面白いミステリーだと思います。
 この作者の次の作品も執筆中ということで、ぜひとも読んでみたいと思いました。

 それにしても、ハヤカワポケットミステリーを買ったのは、20数年前の「皮膚の下の頭蓋骨」以来だったが、当時1200円だったのが、今回は1800円になっていました。