開かせていただき光栄です2012年03月11日 11時52分40秒

開かせていただき光栄です
開かせていただき光栄です(皆川博子著)早川書房

 少し暖かくなったら、花粉の季節だ。
 もう一か月も前から花粉症の薬を飲んでいたのに、金曜日辺りから急にひどくなった。土曜日は、久しぶりに日差しがあり、福寿草を観る最後のチャンスだと五木村の迎烏帽子山に登ろうと考えていたのだが、花粉症の症状があまりにもひどいので土日の外出を控えた。

 ということで、それでは音楽観賞とミステリー読書だ。まずは、ミステリーから。
 
 この「開かせていただき光栄です」という変な書名のミステリーは、国内物ミステリーとして「週刊文春ミステリーベスト10」、「このミステリーがすごい!」、「ミステリが読みたい!」の3誌いずれもで第3位にランクされている、日本人作家による作品です。
 だけども、舞台は18世紀のイギリスです。昨年の国内物ミステリーの1位から3位まで全ての舞台が、ほとんどが海外といいうのも珍しいのではないだろうか。国内を舞台とするより思い切った仕掛けができるのだろうか。

 まだ、医学としての解剖が始まったばかりのころ、検体の確保に苦労していたころのお話です。
 貴族のお嬢さんの妊娠遺体をめぐる捜査から、少年天才詩人と詐欺師の話など、時を前後させながら、巧妙に組み立てられた物語はある一点に向かい展開される。
 盲目の判事を名探偵役に、事件の解明が行われていくのですが、いろんな面白いキャラクターの登場人物も、読者を混乱させる。
 そして、最後の大どんでん返し。
 本当によく練られた素晴らしい本格ミステリーだと思います。

 作者の皆川博子さんのミステリーは、14年前、同じ早川書房から出された「死の泉」(1998年の「このミステリーがすごい!」の第3位、「週刊文春ミステリーベスト10」では堂々第1位にランクされている。)を読んだだけでした。その時の「とても素晴らしい小説だが、あまりにも重たい、読後感のあまりよくない、僕の好みではない」という感じがあったので、今回もちょっとためらいながら読みました。
 ところが、これはとてもよかったです。楽しんで読めました。

 週刊文春ミステリーベスト10で柿沼瑛子さんが「「死の泉」が絢爛たる絵巻物だとすれば、本作はフルカラーの鳥獣戯画でしょうか」と感想を述べられていましたが、なるほどーというところです。
 
 それにしても作者の皆川さんは、1930年生まれというから、今年82歳ですね。老人パワー恐るべし!